単純移動平均の再検証
今年の4月頃からのユーロ/米ドルの動きは単純移動平均には厳しい相場状況ではないかと思い、改めてバックテストしてみました。
通貨ペア:ユーロ/米ドル
期間:2005/01/07~2011/09/06
使用する値:短期SMA 8日、長期SMA 21日
前回調査した時には、まずまず堅調に増加していた資産曲線が、最近の相場でボロボロにやられています‥。
増加した資産のホトンドを市場に返してしまう結果に。
トレンドフォローである以上、今のような相場では損失を出してしまう事は仕方ないのでしょう。
(相場を休むか、バンド(ボリンジャーバンド、エンベロープ等)や「買われすぎ・売られすぎ」を見るような指標(RSI、ストキャスティクス等)を使用してトレードするのが良さそうです)
三本の移動平均線を使用したクロス
次に3本の移動平均線を使用したクロスについて調査してみます。
2本の移動平均を使用する方法よりも、3本使用する方が良いと「マーケットのテクニカル秘録」という本に書いてあったので3本の移動平均線のクロスでトレードするプログラムを作ってバックテストしてみました。
※ R・C・アレンが提唱した「4-9-18日手法」を使用しました。
通貨ペア:ユーロ/米ドル
期間:2005/01/07~2011/09/03
<買いのトレードルール(売りは買いの逆)>
1. 4日移動平均線が9日移動平均線の上へ抜け、更に9日移動平均線が18日移動平均線を上へ抜けたら買い。
2. 4日移動平均線が9日移動平均線の下へ抜けたら手仕舞い。
※ これはドテンルールではありません。仕掛けは長期線のクロスで行い、手仕舞いは短期腺のクロスで行います。
2本の移動平均とは違い、最近の相場でもそれほど損失を出していません!
「4-9-18日手法」はユーロ/米ドルにおいて2本の移動平均線のクロスを使用するよりも良い結果がでそうです。
次にパラメータを最適化してみます。
三本移動平均線クロスシステムの最適化
MetaTrader4で最適化を実行し、「4-18-30日」というパラメータを抽出しました。
バックテスト結果は以下の通りです。(期間は2006/9/7~2011/9/7の5年間)
4-18-30日
ショートポジション勝率 | 52.38% | ロングポジション勝率 | 65.00% |
最大ドローダウン | $14241.31 | ||
1トレード平均利益 | $4294.79 | 平均損失 | -$1969.37 |
なかなか良い結果が出ました。単純移動平均を3本使ったトレードは2本使う場合と比べてかなり優位性がありそうです。
今後はこの「4-18-30日」をベースにもっと改善できないか検証していきます。
単純移動平均を3本使ったトレードの改良-ADX-
今回は「トレンドの無い相場」ではトレードを休む(仕掛けを止める)ように改良します。
2本のクロスを使用した方法より3本のクロスを使用した方が「ダマシが少なくなり安定する」事が検証できましたが、それでも「トレンドの無い相場」では損失を出してしまう事が少なくないからです。
トレンドの有無を計る指標として威力を発揮するのがワイルダー氏考案のADXです。
<トレードルール(買いの場合。売りの場合は逆)>
短期移動平均に4日、中期移動平均に18日、長期移動平均に30日を使用する。
ADXには18日を使用。
(1) 4日移動平均が18日移動平均を上抜け、18日移動平均を30日移動平均が上抜ける。
(2) (1)の条件が揃った際に1日前のADXと2日前のADXを比較し、1日前のADXの方が大きい場合に買う。
(3) 4日移動平均が18日移動平均を下抜けたら手仕舞いする。
バックテスト結果
期間:2006/9/7~2011/9/7
通貨:ユーロ/米ドル [日足]
ADXのフィルタによりトレード数が41回から24回まで減少しました。(17回がフィルタで除外された)
項目 | 結果(改良前→改良後) | 差引(改良後-改良前) |
---|---|---|
総利益 | $103074.93 → $92011.93 | -$11063 |
総損失 | -$33479.31 → -$10675.93 | -$22803.38 |
ショートポジション勝率 | 52.38% → 66.67% | +14.29% |
ロングポジション勝率 | 65.00% → 83.33% | +18.33% |
最大ドローダウン | $14241.31 → $11231.98 | -$3009.33 |
1トレード平均利益 | $4294.79 → $5111.77 | +$816.98 |
平均損失 | -$1969.37 → $-1779.32 | -$190.05 |
予想以上にADXの効果が出ています。
※ADXに使う日数は一般的な14日でも良いです。バックテストでは16~18日を使用するのが最も良かったため、今回は中期移動平均と同じ18日を選択しました。
仕掛けについてはこんなものだろうと思うので、次は手仕舞いについて検証してみます。
トレンドレスの状況(ADXが下落し始める)になったら手仕舞いすることで改善できないか調査しますが、元々の手仕舞いの仕掛け自体、「仕掛けよりも早く手仕舞いする仕組み」になっているので、あまり効果は出ないのではないか・・?と思っていますが‥。
単純移動平均を3本使ったトレードの改良-手仕舞い-
ADXを使用して手仕舞いのルールを改良を試してみましたが悪くなるばかりでした。
利益が最大になるように手仕舞い用の単純移動平均を最適化しているので、これ以上手の加えようが無いのかもしれません。
売りと買いの移動平均を別々のパラメーターとしてみる
売りと買いでは「勢い」が異なりますから、買いの場合と売りの場合でパラメーターを別個に定義しても良いのではないか‥?と考えました。
<シグナルの種類>
1.買いの仕掛けシグナル
2.売りの仕掛けシグナル
3.買いの手仕舞いシグナル
4.売りの手仕舞いシグナル
※ すべて単純移動平均2本のクロスを使用しますので、全部で8本定義します。
5年間のバックテストを行って抽出したパラメータは以下の通り。(ユーロ/米ドルを使用)
1. 買いの仕掛けシグナル 20日と33日のクロス
2.売りの仕掛けシグナル 11日と31日のクロス
3.買いの手仕舞いシグナル 6日と12日のクロス
4.売りの手仕舞いシグナル 10日と30日のクロス
移動平均線にそれぞれ違う色をつけてみましたが・・・ごちゃごちゃしてよく分かりませんね・・・
さて、結果は・・・
項目 | 移動平均3本 | 移動平均8本 |
---|---|---|
総利益 | $103074.93 | $816626.16 |
総損失 | -$33479.31 | $-129551.76 |
ショートポジション勝率 | 52.38% | 62.50% |
ロングポジション勝率 | 65.00% | 88.89% |
最大ドローダウン | $14241.31 | $89236.16 |
1トレード平均利益 | $4294.79 | $26342.78 |
平均損失 | -$1969.37 | -11777.43 |
勝率はADXを併用した改良版とほぼ同等ですが、どうも損失が大きくなる傾向があります‥。
ドローダウンも非常に大きくなってしまいました。
ADX及びDMIの併用
売りと買いのパラメーターを別個に定義した方法ではADXとDMIを併用しました。
・ADX:トレンドの確認 (値が上昇している場合のみ仕掛ける)
・DMIはトレンド方向の確認
トレンドが発生しており、トレンド方向がDMIと一致している場合のみ仕掛けます。
通貨ペア:ユーロ/米ドル 使用チャート:日足 ロット:1.0
期間:2001/10/23 ~ 2011/10/23
項目 | 移動平均8本+ADX+DMI |
---|---|
総利益 | $104,402.22 |
総損失 | -$25,762.57 |
ショートポジション勝率 | 55.00% |
ロングポジション勝率 | 66.67% |
最大ドローダウン | $10796.78 |
1トレード平均利益 | $4176.09 |
平均損失 | -$1610.16 |
そこそこ良い結果が出ました。
これでデモ口座で実行(フォワードテスト)してみます。
日足でやってみたかったことは一通りやってみたので、今後はもう少し短い足を使ったトレードの研究を進めてみます。
他通貨ペアでのバックテスト
次に他の通貨ペアでバックテストを行いました。
良い順番に並べると以下のようになります。(米ドル以外は対米ドル)
ユーロ>ポンド>豪ドル>NZドル>米ドル(円)
いずれの通貨ペアでも5年間のバックテストで利益を出していますが、ユーロ/米ドルが最も良い結果となっています。
他の通貨でこのルールを適用する場合にはパラメータは変更した方が良いでしょう。
(※4-18-30日でもポンドや豪ドルでは利益が出ていました。)
これで単純移動平均を3本使ったトレード関する検証を終わりたいと思います。
単純移動平均ではなく、指数移動平均を使っても良いと思います。
<参考書籍>
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